ふらんすの歌

ライブラリーにはいろいろな人がきます。目的はさまざま。「楽譜をつくる」ために来るひとも。
あたらしい楽譜の企画・編集に向けて大事なリサーチをします。Z社のYさんもそのひとり。

最近、Yさんはフランスの合唱作品のすてきな曲集を担当しました。できたてホヤホヤの楽譜を手に「できましたよ」の声。数ヶ月前に資料室の書棚を真剣にブラウジングされていた姿が重なり、なんとも嬉しい気もちになりました。

「フランスの合唱曲」というと、近そうで遠い?

そんな小径を、"散歩人"Yさんに案内してもらいましょう。

フランス音楽は私の最も好きなものの一つです。

一口にフランス音楽といっても吟遊詩人(トルヴェール)の昔から現在に至るまで無数にあります。でも合唱の世界、それも無伴奏の作品となると意外なほど数が少ないのです。

今回の選曲をするにあたり色々な時代の合唱音楽を探してみましたが、フランス・ルネサンス期シャンソンの大家ジャヌカン以降の無伴奏作品は、アマチュア合唱運動が盛んになったフランス・ロマン主義の時代(19世紀初め)まで待たなければなりませんでした。

その後、サン=サーンス、ベルリオーズ、ドビュッシー、ラヴェル、プーランク、ミヨーなどが堰を切ったように数々の無伴奏合唱音楽の名曲を生み出します。
それらの中から、ジャヌカンの〈戦争?マリニャンの戦い?〉、サン=サーンスの〈2つの合唱曲op.68〉、ドビュッシーとラヴェルの〈3つの歌〉を取り上げました。

解説・演奏アドヴァイスは合唱指揮者の松原千振氏、対訳・発音アドヴァイスはフランス歌曲の第一人者である村田健司氏の両氏が担当。発音指導のための記号はたいへん解りやすいので、今までフランス語に拒絶反応を示していた方々(私も!)にも気軽に歌っていただけるはず、フランスのエスプリを感じてみてはいかがですか。


巻末にある「フランス語の発音について」のワンポイント・レッスン、さっそく館員3人がトライ。
鼻母音(ナザール)を実践するワタシたち、天空にむけて、

「ぼおおーン」

「きょう鼻づまりぎみだから、ワタシいいかも」というM嬢2号に、

村田先生の一言、「この母音は風邪をひいても、寝ぼけても、甘ったれても、成功しません。」

ナルホドね・・・。


みちしるべ

「合唱音楽の歴史, 改訂版」より 第25章<19世紀フランスの合唱音楽> (1974, 全音音楽出版社)

無伴奏混声合唱のためのフランス合唱名曲集 / 松原千振解説ほか (2004, 全音楽譜出版社)

Requiem / Faure. Choral works / Debussy, Saint-Saens, Ravel, Faure (Philips, PHCP-202128) Monteverdi Choir, John Eliot Gardiner 指揮。



初出:「ハーモニー129号2004年」2004.7.10発行/
Special thanks to Yasuhisa Yomogida, Editor, Zen-on Music Co., Ltd.
copyright(c)2004.Junko
Photogragh copyright(c)2004.mamiko.k
Design copyright(c)2004.Misa



合唱センター (c)2004 All rights reserved.