■■ト チ ノ キ オ ク |
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「夜、クラスでコンサートがあるんだけど、来ませんか」2、3年、いやもっと前だったか、職員のMさんが通う英語学校の教室で、先生がコンサートを開くという誘い。 当日午後9時、訪ねたのは、10人も入れば一杯の小さな「教室」、デスクライトがひとつ、電子キーボード1台、簡素な会場。イギリス人とオーストラリア人の男の先生がふたりで歌い、手作りの雰囲気が心地よく時間は過ぎ・・・そして後半、あらわれたのが"ディジェリドゥー"。 まるで、"ビビディバビディブー"?? 呪文のようなそれは、初めて出会う「楽器」だった。
先生は立って、管の先を床につけて息をいれる。ふくろうの声に似た、打楽器っぽい音、吹いているというか歌っているというか。床には小さなキャンドル。どこからか乾いた土と風の匂いがしてくる。都会のビルの中でこれを聞くというのは現代的で、でもどこか切ない。印象的な晩だった。 ふと、今の日本のことを思う。そんな楽器が、身近にあるだろうか。それらを手に、生まれ育った土地のうたを口ずさんだりしているだろうか。「伝統音楽」なんて、とくに構えない、近所のお祭りみたいなものだっていい。 資料室のある東京・恵比寿の街にも、毎夏、都会とは思えない、夢のよう、に幻想的な盆踊り大会がある。場所がら、外国人の姿も多く、ことしは、ヘビのようになめらかな手つきが不思議な、美しいインドの青年がひとり、その傍らで、日本の子どもの手足が刻むリズムには、やっぱりちゃんと、日本人のDNAがある。 ホント不思議、面白い。毎年そう思っている。 |
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■みちしるべ 民音音楽博物館 http://www.min-on.or.jp/library/ 初出:「ハーモニー130号2004年」2004.10.10発行/ |
合唱センター
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