■■ wind songs


4月桜の頃、朝は冷たい空気が残る日も、お昼すぎから夕方にかけては、ぼんやりとした暖かさが感じられてくる。ほどなく緑の風が薫り、それは光の季節の中に消え去っていく。

「惜春」という言葉が浮かぶ−この季節が日本の風土の中でも特別な感慨をもって考えられてきた表れだろうか。

「春の風」で思う合唱曲を一つ。Richard Kidds作曲「Wind Songs」。歌詞は、さまざまな言語による"風"のリレー。次々に渡されていく風のバトン。やがて「風の星-地球」があらわれる。

Richard Kidds

英国チェシャー生まれ、1967年にカナダ移住。モントリオール・マクギル大学でAlcides LanzaとBrian Cherneyのもとで作曲、Richard Lawtonにトロンボーンを学ぶ。卒業後は、バンクーバー市のさまざまな合唱団で合唱作品を発表。1986年にセント・ジョン市のカテドラル音楽監督就任、ニューブルンスウィック・シンフォニーおよびブルンスウィック吹奏楽団にてトロンボーン奏者をつとめる。また、ジャズの分野でも自身のバンド活動に加え、歌手兼作曲家である、夫人のジャネット・キッドとはピアノで共演。近年は、合唱、室内楽、管弦楽の作曲で広く知られるようになり、Robert Charlton Bailey作曲コンクール受賞。

<主要作品> ( )内は初演年
弦楽オーケストラのための Fantasy on Ave Maris Stella (97年)
合唱とオーケストラのための Like an Ever Rolling Stream (Requiem for a Century) (99年)


美しい、風の詩をもう一つ。

《初夏の風》        川上澄生

かぜとなりたや

はつなつのかぜとなりたや

かのひとのまへにはだかり

かのひとのうしろよりふく

・・・(省略)


さわやかな、しかし熱い心を内にもつ風か。この歌を教えてくれた物静かな友人のNさんは、そんな風になって、ある日極東の小さな島から大陸を渡っていった。

みちしるべ

評伝 川上澄生 / 小林 利延 (2004年、下野新聞)

川上澄生美術館 http://www.city.kanuma.tochigi.jp/Facility/Bunka/Kawakami/index_kawakami.htm


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