■■ヴァスクス

ラトヴィアの美しい合唱曲をたくさん集めた全集楽譜に出会ったのは、もう3年以上も前。
小さな紹介記事を書いたことを覚えている。この全集が完結した。楽譜のほかにラトヴィア語の発音表、作曲者のプロフィール(ポートレート付き)、自筆楽譜の一部を掲載。すべての内容に英訳解説があり、一貫した丁寧なつくりにこの出版に携わった人々の音楽への深い愛情が感じられる、記憶に残る楽譜だ。

記事を書いた時のメモに、一人のラトヴィア人作曲家の名前がある―「VASKS」。

昨夏に参加したKaspars Putnins氏のレクチャー「バルト海諸国のの合唱音楽」で耳にした曲の中で印象に残る一つが、このVasksの「The Tomitt brought me news」(録音- Kamer...Youth Choir、Maris Sirmais指揮)だった。


Peteris Vasks ペーテリス・ヴァスクス

1946年、アイズプテ出身。
1959-64年首都リーガにあるEmils Darzins音楽学校でコントラバスを学び、1963-69年ラトヴィア国立歌劇場オーケストラに入団。思想的な抑制によりラトヴィア国立音楽学校(LSC=Latvian State Conservatory、現ラトヴィア音楽アカデミー)の入学を許されず、1964-70年リトアニア音楽アカデミーに留学。この間リトアニア交響楽団のメンバーをつとめる。(1966-69年)さらに、ラトヴィアフィルハーモニック管弦楽団(-1970)、ラトヴィア放送管弦楽団(-1974)にてコントラバス奏者としても演奏活動を行う。
作曲活動は10代よりしばしば行っていたが、1973年、LSCに在籍しValentins Utkinsのもと作曲を学ぶ。1978年卒業。1970年代半ばより、室内楽と合唱のジャンルですぐれた作品を発表しつつ、政治体制への反発から要職につくことを拒否。アマチュアの演奏者の指導や地方の音楽学校で教える。1989年の1年間のみEmils Darzins音楽学校で作曲の教師をつとめる。
2000年にかけて、代表作となる40におよぶ独奏曲・合奏曲また10のオーケストラ作品、そして約30の合唱曲を発表している。バロック音楽のような対比する音の面白さや厚みのある和音、ロマンティックな瞑想にふけるような響きなど、表現の幅はたいへん広い。しかしながら、作風は様式のみにとらわれることなく、歌詩の声が表現されている。合唱作品においては、歌詩が構造的な変化につき従う、つまり構造的変化を優先するよう作られている。しかし歌詩の重要性も追求されおり、作品の規模を問わず、いずれの作品も強いカタルシス(精神の浄化作用)が感じられる。

(「ラトヴィア合唱名曲全集」第4巻1966-1990(2002年, SIA SOL社)210ページより抜粋引用)

みちしるべ

ラトヴィア交流協会 http://www.latvia.eolas-net.ne.jp/

The Latvian Music Information Centre ラトヴィア音楽情報センター
http://www.lmic.lv


初出:「ハーモニー135号2006年」2006.1.10発行/copyright(c)2006.Junko
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