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どこか、旅に出かけたい季節がくる。

空間の移動だけではない、時間の流れを遊ぶ。だから、旅は楽しい。
知らない場所の知らない時間へ。旅の気分に似た1冊を。

『詳説・総合音楽史年表-改訂版(教育芸術社、2003年)』

好きなところから開いてみる。1909年から1914年。「時代区分」が見開き2ページの左右にあり、一方が「近代」、もう一方は「明治時代−大正時代」。

事がらは、左ページ「西洋音楽」から。
「1909 マーラー、管弦楽曲「大地の歌」作曲、交響曲第9番作曲(〜10)。シェーンベル クが無調の歌曲集「架空庭園の書」により「表現主義」へと踏み込む。1910 ストラヴィ ンスキーのバレエ音楽「火の鳥」パリで初演。タンゴ、フォックストロットなど、アメリカの 舞曲が次第にヨーロッパの舞踏会に進出。1911 マーラー(1860〜)、ウィーンで没。リ ヒャルト・シュトラウスのオペラ「薔薇の騎士」ドレスデンで初演。1912 リヒャルト・シュ トラウスのオペラ「ナクソス島のアリアドネ」シュトゥットガルトで初演。1913 ストラヴィン スキーのバレエ音楽「春の祭典」がパリで初演され、大センセーションを巻き起こす。」


「西洋の政治・文化」の項がこれらに並ぶ。
「1909 オーストリアでフロイトによる精神分析学とアドラーによる個人心理学の方法が発達。アメリカのピアリーが北極点に到達。アンドレ・ジッド、『狭き門』発表。1910 トルストイ没。ロシアの画家カンディンスキーの絵「コンポジションU」1911 アムンゼンが南極点に到達。シャガールの絵「私と村」1912 トルコでバルカン戦争(〜13)。トーマス・マン、小説『ヴェニスに死す』執筆、印象主義に対抗して表現主義がより発達。カンディンスキー、クレー、マルク、ココシュカ、マイドナー、シャガールらが台頭。タイタニック号沈没。1914 サライェボ事件を発端に第1次世界勃発。ロシア、フランス、イギリス対ドイツ、オーストリア。オーストリアの画家エゴン・シーレの「暗色のスーツの自画像」。パナマ運河開通」


対する右ページは「日本・アジアの音楽」と「日本・アジアの政治・文化」。
「1909 三越少年音楽隊。日本蓄音器紹介発足、「ニッポノホン」レコード発売(のち日本コロムビアと合併)。1910 山田耕筰、ドイツに留学。『尋常小学読本唱歌』発行。1910頃インドネシアに新しいガムラン、ゴング・クビャル誕生。1911 名古屋のいとう呉服店(後に松坂屋と改称)、少年音楽隊結成(後の中央交響楽団)。中国、京劇の黄金時代、名優・梅蘭芳(〜20)。1912 中国(中華民国)、教育部が普通学校に唱歌課程の設置を定める。1913 大正琴発明される。1914 山田耕筰、日本最初の交響曲「かちどきと平和」発表。「佐渡おけさ」流行し始める。坪内逍遥作詞・2世常磐津文字兵衛作曲「お夏狂乱」初演(帝劇)。日本楽器、ハーモニカ製造を開始」−−「1909 伊藤博文暗殺される。北原白秋の『邪宗門』刊。自由詩社おこり、相馬御風ら口語詩を作る。1910 石川啄木『一握の砂』刊。日本、韓国を併合。1911 中国(清)、辛亥革命。川上音二郎没。帝国劇場開場。1912 明治天皇崩御、大正天皇即位。中国、清朝滅び、中華民国が興る。石川啄木没。1914 日本、対独宣戦布告(第1次世界大戦参加)。夏目漱石、『こころ』発表」


1ページの内容を追う中で、イマジネーションの世界はさまざまに広がっていく。

しなやかな思考に基づかれた項目の選び方や配置。副題に掲げられる「音楽を世界の歴史からグローバルにとらえる」視点の、本物の実践。

みちしるべ

図書 『詳説・総合音楽史年表』 改訂版 / 皆川達夫・倉田義弘 監修(教育芸術社、88p、ABヨコ、2003年)ISBN 4-87788-212-X、\2,100

初出:「ハーモニー137号2006年」2006.7.10発行/
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