脈々と、深々と
仕事場でのe-mailはふつうのことになったけれど、一年の中でも、冬は郵便の出番が多い季節。年末のクリスマスカード、年賀状、寒中御見舞い、美しい絵、心をこめた文字をのせて紙の便りが世界中を飛び回る。

冬の初め、寒椿のつぼみを描いた絵葉書を送ることがあった。ひょいと迷った。椿は真冬のものだったかしら。もう近所でも見かけるけれど、地球温暖化の影響?手元に辞書がなく、携帯電話で「寒椿」をネット検索。「椿科。学名ツバキ(カメリア)属サザンカ(日本名)。」開花時期は、11/25頃〜翌2/10頃。公害に強い。「・・・山茶花とは、葉っぱも花も開花時期もほぼ同じでなかなか見分けがつかない。(学名的にもほとんど同じ)」なるほど。さらに思いついて「季語」の条件を足してみた。面白そうなサイトに遭遇。

「木と俳句、季語-木と季語」より。
春―黄楊の花、牡丹の芽、海棠、樫の花、桑、桑の花、紅梅、梅、桜、初花、遅桜、八重桜、山桜、山吹、若緑、春落葉、松の花、辛夷、杉の花、赤楊の花、沈丁花、椿、桃の花、藤、猫柳、柳、柳の芽、馬酔木の花、榧の花、躑躅


この国の身近な木々の種類が多いことにあらためて気づく。一つ一つ、書き出してみる。幼い子どもが見るものすべてを指差し確かめるように、ゆっくりと。何て豊かな線のかたち。でもそれ以上に筆舌に尽くしがたい「恵み」をここに感じるのは、なぜだろう。

一人の人物が思い出される。白川静さん。以前、ある写真雑誌で読んだ記事。漢字を単なる象形文字としてではなくて、人びとの生活のかたちや、心のありように深く結びつけて説いてゆく解釈は、壮大な物語を読むようだった。実にダイナミックで、思わずぐいっと引き寄せられた。

今ここに新たに手にした一冊。「神さまがくれた漢字たち」序文にこうある。
・・・「漢字」は、中国の古代の人々の、きわめてゆたかな、また私たちがすっかり忘れてきてしまったような、自然や社会にたいする切実な思いが、たくさんこめられています。こうして作られた「漢字」は、そののち、おおよそ三三〇〇年の長きにわたって生きつづけ、いまになお、私たちの生活のうちに脈々と、また深々と息づいています。その「漢字」を、ただ機械的に学習するだけでは、その古代の世界に想いを馳せるなど、とうてい不可能のことであるはずです。
どうか、この本で、そのゆたかな「漢字」の世界を作りあげてきた中国の人々の想像の跡と、それを、みごとに受け入れてきた日本の人々の苦心の跡を、たずね確かめ、そうして、確かめ得たことを、周囲の人たち、また次代の人たちにも伝えていってくださいますように。

みちしるべ

図書 神さまがくれた漢字たち (よりみちパン!セ02) / 白川 静 監修, 山本史也 著
(理論社、2004年)ISBN 4-652-07802-1

初出:「ハーモニー139号2007年」2007.1.10発行/
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