合唱音楽の新たな発信

 第7回世界合唱シンポジウムが2005年に京都で開催されることになりました。世界合唱シンポジウムは国際合唱連合の主催による合唱音楽の普及発展を目的とした催しで、3年に1回開催されています。全日本合唱連盟では、かねてからこの世界的規模の合唱の祭典を日本で開催することが日本はもちろん世界の合唱界にとって大きな意義があると考え、誘致を進めてきた結果このたび日本開催が実現したものです。
 合唱音楽は地球上のあらゆる場所でそれぞれの地域の歴史・文化を背景として発展してきました。私たちはアジアで初めてしかも京都という歴史と伝統を持つ地で開催される合唱シンポジウムを、さまざまな文化の相互理解と融合の一環として捉え、これからの合唱音楽の方向性を見いだす場とするとともに日本から新たな合唱文化を発信する機会にしたいと考えています。

 シンポジウムは合唱指導者などの専門家のためだけの催しではありません。合唱団員はじめ広い範囲の合唱にかかわる人々が世界各国の合唱団の演奏に接し、世界的な指揮者・作曲家・演奏家から新しい知識を得る、という貴重な体験ができる場です。
 日本の合唱人にとっては、世界のさまざまな合唱音楽を知って今後の合唱活動についての新たなヒントが得られ、世界各地から日本を訪れる合唱人は日本の風土で育まれた合唱から大きな刺激を受けることになると思います。そして、このような交流の中から日本と世界の合唱音楽のさらなる発展が実現する、と確信しています。
 このシンポジウムに多くの合唱を愛する人々が集まり、合唱を楽しみ、交流を深めてくださることを願ってやみません。

社団法人全日本合唱連盟理事長
第7回世界合唱シンポジウム実行委員長
吉 村 信 良


世界の合唱がやってくる

 世界合唱シンポジウムは、3年に一度、国際合唱連合とホスト国の共催により開催される国際イベントです。世界の合唱団員・指導者が、ワークショップ、コンサートを通して、合唱音楽の芸術性を高め、交流を図ることを目的としています。ウィーン(1987年)、ストックホルム/ヘルシンキ/タリン(1990年)、バンクーバー(1993年)、シドニー(1996年)、ロッテルダム(1999年)、ミネアポリス/セント・ポール(2002年)と過去6回、15年にわたる歴史の中で、数多くのコンサートがプログラムに組み入れられるようになり、合唱指導者だけでなく、一般合唱愛好者にとっても意義深い催しになってきました。

シンポジウムコンサート
 シンポジウムの核となるのが「シンポジウムコンサート」です。このコンサートは、ヨーロッパ、アフリカ、北アメリカ、南アメリカ、オセアニア、そしてアジアの各地域を代表する世界トップレベルの招待合唱団によって「世界の合唱が今どのような姿なのか」を示し、「世界合唱の祭典」にふさわしく多彩なものになります。会場には素晴らしい音響空間を持つ京都コンサートホールを予定しています。
シンポジウムでは一般参加の合唱団を歓迎します。合唱団単位で参加登録し、希望すればシンポジウム会場内で開催される「オープンコンサート」や地域の方々を含めた交流の場である「コミュニティコンサート」で国内外の参加者や地域の方にそれぞれの合唱団の個性豊かな演奏を披露することができます。

オープニングガラコンサートと
クロージングガラコンサート

 シンポジウムの幕開けとなるオープニングガラコンサートと未来につながるクロージングガラコンサートは、アジアと世界を対比させるようなプログラムで、魅力あふれる演奏会にしたいとの構想を持っています。


世界屈指の指導者によるワークショップ

 シンポジウムではコンサートと並んで多くの時間がワークショップに割り当てられており、世界のトップクラスの合唱指導者や専門家から合唱に関するさまざまなテーマについてレクチャーや実践型の指導を受けることができます。
 ワークショップのプログラムは芸術委員会が企画中ですが、世界各地域、各時代の合唱音楽の紹介・解説、指揮法・発声法などの指導をはじめとして幅広いものになります。ワークショップは、世界の合唱界の最新情報を知る場として、また日本の合唱を世界の人々に理解してもらう情報発信の場としても大きな意味を持っています。
 ワークショップは主として英語によるレクチャーになると思われますが、実践型のプログラムであれば「音楽」という共通言語によって「言葉の壁」を超えて理解できる部分が多いはずです。ただし、国内参加者の理解を助けるためにワークショップの内容によって通訳、日本語による解説、日本語テキストの配布などの方法を検討しています。

音楽展
 コンサートやワークショップと同時に、音楽展が開催されます。音楽展には楽譜、音楽書籍、CD、DVD、パソコン・ソフト、音響機器、民族楽器、等などが展示されます。通常は情報の乏しい海外の楽譜やCDを実際に見て入手することができます。さらに、この展示会で世界の合唱フェスティバルやコンクールの情報を得ることもできます。

その他のイベント
 シンポジウムの中間日にあたる日曜日には、「全日本ジュニアコーラスフェスティバル」が開催されます。日本のジュニアコーラスの演奏を世界の人々に紹介するとともに世界からやってくる少年少女合唱団の参加によって国際交流を図るフェスティバルにすることを計画しています。それはまさしく次の世代への「歌の架け橋」となります。


ミネアポリス大会参加者の感想

坂口和彦さん(大阪)
シンポジウムは実に「Great!」。過去に、ヨーロッパ・カンタートなどに3回くらい参加したことがありますが、初めて世界合唱シンポジウムに参加してみて、「Great!」の一言です。知らないことが多すぎるので、いろいろなことを再確認し、たっぷりと勉強させていただきました。レクチャーやワークショップにはすべて出ました。

金川明裕さん(東京)
 8日間の日程の中、14回のコンサート、10余りのワークショップに参加しました。私のサビついた英語力では3割程度の理解がやっと。でも、そこには音楽の強み、最高の共通言語は、やはり「美しい音」でした。お馴染み、シャンティクリアの明るいサウンドで始まったコンサート。大会2日目に登場したアルメニアの子供たちの伸びやかな演奏に、のっけからアッパーカットを喰い、早くも2ラウンドダウンという体たらく。巨匠H・リリンク指揮ペンデレツキ「クレード "Credo"」はボディにじわじわと利き、圧巻は大会7日目、セント・ポール大聖堂でのカリュステ指揮WYC2002の演奏。大聖堂の構造を最大限利用したタリスの40声のモテット「汝よりほかに望みなし」は、まさにドーム天井から福音が降ってくるがごとく。極めつけは、その後に演奏されたマーラーの編曲物2作。若者たちが醸し出すアンニュイな暖かさの中で、法悦というこういうことなのかと、実体験させられました。もう思い残すことはなく、日本に帰れると思ったのは早計。最終日のノルウェー・ソロイスツ・クワイアは、大人の完璧なアンサンブルを聴かせ、なるほど、今大会はこれで締めたかったのだなぁ、と納得させられたものです。

浅井敬壹さん(京都)
私が中学の時、アイアムアボーイと英語の時間に教えてくれた先生は、家庭科の男の先生だった。それ以後、今日まで語学力は最低の最低である。ミネアポリスの講座のなかにいた私は、講師の話される英語の中で、国名以外は何もわからなかった。わからないのは恥ずかしいから、アメリカ人の受講者が笑うのに先がけて一秒早く笑うことに意識を集中させた。講座が終わると少し疲れたが、なんともいえない共有感があった。言葉はわからなかったが、そこには音楽があったからだ。……これを一週間、一つも休まず、私はすべての講座に出席した。語学のまったくできない私だが、ミネアポリスの一週間ほど音楽する──特に合唱音楽に接する―─ことが、こんなにも素晴らしいと身をもって知った時間は過去にはなかった。だけど言葉がわからなくって楽しかった私が、もしわかっていたら、もっともっと素晴らしかったのだろう。そのことが残念。今、私は「I can not speak English at all !」とすらすら言える。


スケジュール
シンポジウムのスケジュールは以下の通りです。一日のスタートの「Open Singing」は、ウォーミングアップを兼ねて世界の小品をみんなで楽しく歌う時間で、シンポジウムの名物となっています。
オープニングガラコンサートからクロージングガラコンサートまで、全日本ジュニアコーラスフェスティバルを含めて8日間、合唱を満喫することができます。

Time 7/27(水) 7/28(木)〜30(土) 7/31(日) 8/1(月)〜3(水)
09:00 - 09:45   オープンシンギング ジュニアコーラス
フェスティバル
オープンシンギング
10:00 - 12:00   ワークショップ ワークショップ
12:00 - 13:00   オープンコンサート オープンコンサート
13:15 - 14:30   コンサート コンサート
15:00 - 17:00   ワークショップ ワークショップ
19:00 - 21:00 オープニング
ガラコンサート
コンサート コンサート

参加方法
この「世界合唱の祭典」に参加するには事前の参加登録が必要です。参加期間は(1)全期登録、(2)半期登録(前半または後半)、(3)1日登録、の3パターンがあります。参加登録すると対象期間中のコンサート、ワークショップ、音楽展に入場することができます。ただし、「1日登録」の場合はワークショップと音楽展への入場だけとなり、コンサートへ入場するには別にチケットを求めていただくことになります。
参加登録費は参加者の所属や期間で区分されています。参加登録受付は2004年8月から開始する予定です。

区分 全期登録 半期登録 1日登録

合唱連盟加盟団員

50,000円

30,000円

10,000円
一般 60,000円 36,000円
団体割引・学生割引も予定しています。なお、この参加登録費は変更する場合があります。詳細は2004年8月発行のパンフレットをご覧ください。


 国際合唱連合(IFCM)
国際合唱連合(International Federation for Choral Music)は、世界の合唱音楽家のコミュニケーションを促進するために1982年に創設されました。世界合唱シンポジウム・地域シンポジウム・指揮マスタークラス・世界青少年合唱団・合唱作品データベース(MUSICA)・インターネットホームページ(ChoralNet)の企画運営、会報(International Choral Bulletin)・世界合唱情勢(World Choral Census)・世界の合唱レパートリーを収めたカンテムス(Cantemus)の発行、世界合唱の日の制定など多くの事業を行っています。ユネスコ国際音楽協議会の合唱部門の公式代表機関としても貢献しています。現在、79カ国が加盟。
http://www.ifcm.net


国立京都国際会館
国立京都国際会館は、洛北、比叡山のふもと、宝ヶ池畔に位置し、JR京都駅からは地下鉄で20分。世界合唱シンポジウムのメイン会場として、総合受付・ワークショップ会場・音楽展会場・レストランなどの機能が置かれます。
http://www.joho-kyoto.or.jp/KICH/

京都コンサートホール
京都コンサートホールは、世界の名ホールに採用されている"シューボックス型"のコンサートホールで、1800の客席を有しステージと客席が一体化できる音響空間を持っています。世界トップレベルの合唱団のコンサートは、ここで毎日開催されます。
http://www.kyotoconcerthall.org

お問合せ
第7回世界合唱シンポジウム実行委員会

〒150-0013東京都渋谷区恵比寿1−5−8柳沼ビル6階 (社)全日本合唱連盟内
TEL:03-5421-7150 FAX: 03-5421-7151
E-mail:
ws7@jcanet.or.jp