World Youth Choir  参加者の声

World Youth Choir 2023

開催日:2023年6月3日(土)〜12日(月)
開催地:クロアチア、スロベニア、ハンガリー     
指 揮:Zoltán Pad(ハンガリー)
ゲストコンダクター:Sebastjan Vhrovnik(スロベニア)
コンサート:
6日 Sts. Vitus, Modest and Crescentia's Church(クロアチア・グロジュニャン)
9日 Julij Betetto Hall, University of Ljubljana Academy of Music(スロベニア・リュブリャナ)
10日 Grand Hall, Liszt Academy(ハンガリー・ブダペスト)
11日 Saint Michael's Cathedral(ハンガリー・ヴェスプレーム)

World Youth Choir復活!  津志田真由子

 WYC2023 は、コロナ禍を経て4年ぶりの再開を祝う記念すべきセッションとなりました。今回は Alumni (同窓生)セッションということで、2016年以降に参加したメンバーの中から26カ国40人の歌手が集まり、10日間を共に過ごしました。メンバーたちはハグをして再会を喜び、「コロナ禍にあった数年間を思うと信じられない光景だ」と感激していました。セッションはクロアチアの"Grožnjan"という音楽が盛んな小さな村から始まりました。

〈音楽について〉

 指揮者はハンガリー放送合唱団の指揮者を務めるZoltán Pad。彼のリハーサルはとてもスマートで、曲の必要な箇所をピックアップして効率的な練習が行われました。通常のセッションよりもリハーサル期間が短く、現代曲を含む難易度の高いプログラムでしたが、Zoltánの的確な指導により徐々に音楽が整理されていきました。

 彼のリハーサルで最も印象的だったのは、ピッチについてです。和音の中で混ざり合うピッチとはどのようなものなのか、自身でピアノを弾いて例を示してくれました。単に自分の正しいと思う音程で歌うのではなく、鳴っている倍音に馴染む音とはどういう音かを体感することができました。

 2日間のリハーサルを終えて、3日目の夜にGrožnjanの教会にて最初のコンサートを行いました。その後バスで移動し、スロベニアの音楽院、ハンガリーのリスト音楽院と教会で計4回のコンサートを行い、いずれも大盛況のうちに幕を閉じました。コンサートを重ねるごとに合唱団としての音色がまとまっていき、リスト音楽院でのコンサートでは拍手が鳴り止みませんでした。

 また、最も印象に残っているのが最後のコンサートでの出来事です。コダーイ"Miserere”のフィナーレにさしかかると、Zoltánは静かに指揮をやめ祈りのポーズで歌声にただ耳を澄ましました。合唱団は指揮者が自分たちを信頼して指揮をやめたことを感じ取り、より繊細に聴き合って耳だけで声を合わせました。教会でのこのような神聖な音楽体験は、今も心に鮮明に残っています。

〈文化交流について〉

 多文化交流とは異なる文化を知ることだと考えていましたが、それは同時に自分自身のアイデンティティについて深く知ることでもありました。メンバーの1人が「全く違う文化、性格を持つあなたを身近で見ていて沢山のことを学んだ。あなたは私の人生を変えた。」と伝えてくれました。異なる文化を持つ仲間の目を通して見る自分の姿を知ることはとても新鮮でした。WYCとの再会を通して、自分とはどのような人間なのかについて深く向き合うことができました。この経験は、これからの人生を自分らしく生きていくための自信と勇気を与えてくれました。

 また、最後のコンサート後のパーティーでは恒例のランキング発表がありました。ランキングはメガネが似合う人や魅力的な人などユニークなものもありますが、私は"もっとも親切な人に選ばれました。「321… Mayukooooooooooooooo!」とみんなが笑顔で名前を呼んでくれたあの光景は忘れられません。こんなにも嬉しかった理由は、私自身の今回の目標が「自分の殻を破り積極的にメンバーと関わること」だったからです。シャイな性格を変えてみんなの輪に飛び込むことに挑戦しようと決めていました。自分から積極的に関わろうとしたことが仲間たちに伝わったように思えて、とても嬉しかったです。怖がらずに心を開くことで、もっともっと素敵な出会いがあるということを実感することができました。シャイな自分を変えるには十分すぎるほど刺激的な10日間でした。

 私にとってWYCとは、温かい家族のような存在でもあり、全てが刺激的で常に価値観の刷新をもたらしてくれる存在です。国境や言語の壁を超えて音楽で繋がる仲間たちとの出会いは、人生に大きな影響を与えてくれました。私は現在、障害児療育の場で音楽療法の実践に携わっています。二度のWYCセッションを通して音楽の持つ力を実感できたことは、これから音楽療法を実践していく上での大きな希望になりました。これまでの経験を活かして、社会に貢献していけるよう頑張りたいと思います。

 最後になりましたが、セッションに参加するにあたりご支援くださいましたすべての皆様に心より感謝申し上げます。そして復活を遂げたWYCの新たな発展と、これから沢山の日本メンバーが素晴らしい経験をされることを楽しみにしております。ありがとうございました。