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WORLD YOUTH CHOIR’98 in Taiwan
世界青少年合唱団'98に参加して

〜台 湾〜

 「WORLD YOUTH CHOIR’98」に、5人のメンバーが日本を代表して参加しました。今年は、台湾でリハーサルキャンプを行い、その後、台湾とフィリピンでコンサートを繰り広げました。参加した渡部咲子さん、松下めぐみさん、辻 政嗣さん、石原祐介さん、川村章仁さんにその様子を聞いてみました。

 

────価値ある合唱経験でしたか?

川村 今年、初めて参加しましたが、とても価値のある経験でした。特に、日本人以外の仲間と一緒に同じ音楽を楽しめたことは、本当に感動しました。

渡部 素晴らしい経験をさせてもらったと思います。演奏する曲目が多種多様で、宗教曲やポップス、現代曲や民謡、ア・カペラの曲と、オーケストラでジョイントした曲等、いろいろな国の言語なので、その国特有の色があり、簡単に経験できないことがたくさんありました。そして、日本の合唱団では味わえないようなエキサイトしたものを感じました。受け身ではなく、反対にそれぞれが、前に押し出すような、個性がぶつかり合いながらも、上手くハーモニーを作れる合唱団なので、素直に、気持ちよく歌っていくことができました。

松下 大変すばらしい経験でした。WYCに送りこんでくださり、お世話していただいたみなさんに感謝しています。今までには体験したことのない、豊かなハーモニーと表現力でした。その中に包まれて、とても幸せな気持ちになりました。スケジュールやプログラム、そして時には自分の英語力の至らなさにつらさを感じるときもありましたが、それよりも、世界中の、とても陽気で、パワフルで、才能にあふれる面々に出会い、接することができて、自分の視野がいっきに広がりました。また、彼らから「心底、音楽を楽しむ」「いつでも、どこでも音楽を楽しむ」ということを教えられました。

石原 とてもすばらしい経験でした。国籍、文化、話されている言語や習慣の違う100名近いメンバーが楽譜という共通言語で一つの音楽を作っているという事実に、ただただ感激しました。非常に幼稚なことかもしれませんが、今までの音楽人生の中では考えられなかった経験をしたわけで、その新鮮な感動は忘れられません。また、日本人の声、合唱にはない響き、ハーモニーを自分の耳でじかに聞くことができ、現在、2〜3の合唱団と関わっている指導方針に大変参考になりました。

辻  世界各国から集まった私と同世代の人々と知り合い、友達になり、高いレベルで一つの音楽を作り上げていくという喜びを分かち合えることができました。貴重な経験をさせていただきました。

 

────今年、最も印象に残った瞬間は?

川村 演奏を終えて、お客さんから拍手をもらった時すべてです。

  音楽面ですばらしいと思った瞬間は多々ありました。それ以外にもいろいろな国の人々と生活してみて、学ぶことがたくさんありました。例えば、物事に対する積極性の違いや、常に助け合う人の優しさを感じました。

渡部 私が、不安や緊張、神経質になっていた時、メンバーが心のこもった言葉や笑顔で接してくれたことです。楽しい時にはお互い笑い、つらいときには慰め合い、励まし合い、時には、冗談も言い合い、お互いを、色々な視点で認めあい、メンバー全員が家族のように心から信頼し、協力しあって、最高のひとときを過ごせたと思います。

松下 演奏後のフィリピン人観客の熱狂ぶりです。客層が若かったせいかもしれません。日本では経験できなかったことですが、“観客の総立ち”や小学生くらいの子供たちの握手、サイン攻めがありました。演奏者に自ら近づき、自分の感想を述べたり、今後の予定を質問したり、いろいろと話をしたがる人に驚きながらも楽しい時間でした。

石原 フィリピンでの演奏会でアンコールを歌った時です。「我が祖国」という、マルコス政権崩壊時に作られた曲なのですが、歌い出した瞬間の聴衆の熱烈な拍手と歓声は、歌の持つ力のすさまじさを私に教えてくれました。日本にはこのようなエネルギーを持った曲は絶対に存在しません!!

 

────最も楽しめた曲は?

渡部 すべてです。

  台湾の青少年合唱団とジョイントしたRobert Reyの「Gospel Mass」が一番印象に残りました。

松下 “Praise His Holly Name”。指揮者がピアノ伴奏をし、手拍子をするところもあって、全員ノリノリの楽しい曲でした。

石原 同じく、“Praise His Holly Name”です。この曲は、指揮者のアンドレ・トーマス氏がピアノ伴奏をしてくれたのですが、彼自身の持っているゴスペルの音楽は、ネイティブでないと決して表現できないものでした。また、歌い手と聴衆が一体になれた曲で、楽しく歌うことができました。

川村 “My Lord, what'a morning”。

 

────他の人にWYCの参加を薦めますか?

川村 はい、薦めます。とにかく、WYCは、永遠に続けてほしいと思うプロジェクトです。

  私は今年で3回目の参加ですが、毎年大学の友人や先輩方に薦めています。もっとたくさんの人々に私たちと同じように、すばらしい経験をしてほしいです。

松下 実際に友人に薦めました。WYCにはどうしても日程的に無理な友人には、アジア・ユース・コーラスを薦め(疑似体験ができると思い…)、彼女は参加することができました。たくさんのすばらしい体験ができ、音楽に対する考え方、行動が変わったと言っていました。

石原 はい、薦めます。特に、室内合唱を指導したいと思っている人にとっては、WYCの持っている透明感のある、非常に高い響きの声をじかに聞くことで何らかのヒントを得ることができると思っています。もちろん、合唱をただ楽しみたいと思っている人にとっても非常に有意義な経験になることは間違いありません。

渡部 はい、もちろんです。人間形成していく上で、WYCでいろいろなことを学ぶことができるでしょう。

 

────今回の経験から何か建設的な提案がありますか?

松下 他の日本人メンバーからもチラホラ話が出ていましたが、これまでのWYCの日本人メンバーで集まり、演奏または何かができないかと思います。もっと広く、WYCのことを、みなさんに知ってもらいたいと思います。

石原 今回、台湾で地元の青少年合唱団と共演する機会がありました。毎年とは言いませんが、日本でも小人数で期間もそんなに長くなくてもいいので、WYCのような年齢層の合唱団を全日本合唱連盟が中心となって結成し、公演してみてはいかがでしょうか。

 

────全日本合唱連盟が促進すべきものだと思いますか?

松下 ぜひとも!! お願いします。

石原 これからは、いろいろな合唱や音楽をする団体が全日本合唱連盟と関わりを持つことで、みなさんの組織がますます発展していくと思います。その多様性の中の一つとしてWYCに参加できる人を発掘し、また、その時の経験などの情報を集め、提供すべきではないでしょうか。そうすれば、これからの連盟の存在が、より大きくなることができると考えています。

 WYC’97 in Japanが大成功を遂げたのも全日本合唱連盟スタッフの皆様の努力の賜物だと思います。これからも皆様がWYCに与える影響は大きいと思います。

渡部 合唱をする者にとって、もっとたくさん経験や勉強できる、レベルアップできる場所を提供していただきたいです。

川村 日本では、やはり、合唱連盟が主に促進した方がよいと思いますが、日本全国の音楽大学からも協力を得られるのではないでしょうか。

 

────来年、また参加したいですか?

渡部 はい。

松下 参加したいです。オーディション受けます!

  それはもちろん! そして、また、すばらしい仲間と出会いたいです。

石原 はい。17歳から26歳という限られた時間の中でしか参加できない貴重な経験ができる場だからです。特に、私にとっては、来年がWYCに参加できる最後の年ですので、もし参加できれば、とことん楽しみたいと考えており、メンバーに選ばれることを期待しています。

川村 Of course! はい、もちろんです。ただ、旅費があれば…。

 

 彼らは、厳しい国内オーディションと世界審査会を見事にくぐり抜け、世界30以上の国々から集まった90名の若者たちと合唱を共に楽しんできました。住んでいるところは違っていても、同世代の考え方がそんなに違わないこと、お互いに助け合って生きていくことのすばらしさを学んできています。世界が平和であること。WYCの存続は、それにかかっています。

 

〜プロフィール〜

渡部咲子(わたなべ・さきこ)
西内玲、V・レニッケの両氏に師事。作陽音楽大学卒業。同大学オペラマイスタークラス研究生。WYC'96 in Estonia、WYC'97 in Japan、 WYC'98 in Taiwanに参加。ソプラノ。

松下めぐみ(まつした・めぐみ)
現在、大阪府立高校と私立中学校で音楽の非常勤講師。関西歌劇団準団員。岡山県生まれで幼稚園時に音楽教室へ通いピアノを始める。父親の転勤で小学校は島根県で過ごす。合唱部に入り、多くの演奏会やコンクールを体験し、合唱のおもしろさを知る。大阪に移り、中・高校時はテニス部のレギュラーだったが、音楽会ではピアノ伴奏やミュージカルの主役を務める。その後、大阪音楽大学声楽科に進み、卒業。WYC'97、'98に参加。ソプラノ。

辻 政嗣(つじ・まさし)
くらしき作陽大学音楽学部声楽専攻4年在学中。同大学室内合唱団団員・学生指揮者。合唱活動は主に宗教曲を研究している。その他ハイドン「ミサ」、バッハ「カンタータ」のソロを歌う。西内玲女史に師事。WYC'96、'97、'98に参加。テナー。

石原祐介(いしはら・ゆうすけ)
私立崇徳高校在学中にグリークラブに入部し、合唱を始める。その後、京都産業大学に進学。グリークラブに入団し、学生指揮者およびバリトンパートリーダーを務める。現在、京都市立芸術大学音楽学部音楽学科声楽専修2回生。また、京都産業大学グリークラブのトレーナーとして後輩の指導にもあたっている。声楽を灘井誠、山口はやと、指揮法を吉村信良の各氏に師事。WYC'97、'98に参加。バリトン。


川村章仁(かわむら・あきひと)
東京音楽大学オペラコース3年次在学中。平田栄寿氏に師事。WYC'98に、はじめて参加。バス。

聞き手:江川善裕(全日本合唱連盟国際交流委員会事務局)


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