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WORLD YOUTH CHOIR winter session 99-00
世界青少年合唱団冬セッション'99-’00報告 ベルギー〜オランダ〜フランス
7時起床、8時から朝食。9時からウォーミングアップし、9時半からリハーサルを開始する。12時半から昼食で、しばらくの休憩の後、夕方4時から再び練習。6時半から夕食をとり、夜7時半から9時まで3度目の練習を行う。ベルギーのナミュール市郊外の施設を使っての冬セッションの合宿は、こうして9日間行われた。今回の指揮者は二人。アメリカのアンドレ・トーマス氏と日本の田中信昭氏。田中氏は言葉のハンデがあるものの、97年の実績と音楽性で、深い読みのやりとりのなか日本の音楽を再構築していく。一方のトーマス氏は、歌詞の中のひとつひとつの言葉に付する表現の深さを追求し、音楽を組み立てていく。田中氏とトーマス氏のプログラムは、あまりにも対照的で、まるで水墨画と油絵の様。線的な動きと自由な動きが絡まる濃淡のある音楽、一方は豪華な色彩で厚みのある響きを伴った音楽。聴いているものにとっては、この上なく興味深い。
コンサートは、どこもデッドで、演奏会場に左右されたツアーだった。初日と2日目のナミュールは、言葉は、明確に伝わってくるものの、残響が少なく、この演奏を日本のコンサートホールでやったらどんなだろうと想像しながら聴いていた。3日目のロッシュフォールもまたドライで、ちょうど小ホールの感じ。団員は「いい演奏だったのに聴衆の反応が少ないね」と言っていたほどである。残響が比較的長かったのは4日目のティルブルク。WYCの元団員も駆けつけ、素晴らしいコンサートとなった。ラジオ放送もされた。5日目のコンサートはフランスのサン=ディエ。ティルブルクから深夜にナミュールに戻ってきたにもかかわらず、朝5時に起床し出発した。ヨーロッパの中でも小さな国ルクセンブルクを経由し、フランスに入る。ちょうど年末にフランス全土を襲った大嵐の影響で、サン=ディエの町も大きな被害にあい、樹木が根こそぎ倒れている光景を目のあたりにした。コンサートの開催も危ぶまれたそうだが、当日は1・2階席ともほぼ満員となった。残念なのは、ここでも残響で、まったく響きのない状態であった。最後のコンサートは、フランスのヴェルダン。世界平和センター、カトリック教会、宿泊施設が併設してある場所の一部屋で行われた。客席数は少ないものの、臨場感があり、団員のノリも最高で、これまでで一番よい環境の中で、演奏ができた。特に印象的だったのは、間宮芳生の「合唱のためのコンポジション」と高橋悠治の「クリマ・トーガニ」、第2部の男声合唱曲の「Goin' Up to Glory」「Ave Maria」が好演だった。アンコールでは、田中氏の指揮とトーマス氏のピアノで「夕焼小焼」を披露した。
この3週間で、音楽的な面での作品への掘り下げ方、組み立て方に間近で接することができたこと、97年に日本に来ていた団員との再会や2000年を迎えた瞬間にみんなで抱き合って喜んだこと、トーマス氏やプロジェクト担当者のジオー氏の家族に会えたことなど、いつもWYCには新しい出会いが待っている。「音楽は世界に平和をもたらし、音楽家はその使者である」。この言葉にこそWYCの真の目的がある。世界各地から若人が集まり、友情を育んで、そして各地へ戻る。政治の世界は閉鎖的になるときもあるが、音楽はいつも世界に開かれている。そんな合唱の世界が素晴らしい。(国際委員会事務局 江川善裕)*WYC冬セッションは今回が2回目で、世界合唱センターがあるナミュール州および市の要望に答える形で始まった。
*田中信昭氏は、ご存知のように東京混声合唱団の桂冠指揮者で、日本で97年に行われたWYCの指揮者を務めた。
*アンドレ・トーマス氏はフロリダ大学で合唱と音楽を指導している。98年のWYC(台湾)の指揮者。
コンサートツアー
1月5日(水) ナミュール(ベルギー)
1月6日(木) ナミュール(ベルギー)
1月7日(金) ロッシュフォール(ベルギー)
1月8日(土) ティルブルク(オランダ)
1月9日(日) サン=ディエ(フランス)
1月11日(火)ヴェルダン(フランス)プログラム
第1部 指揮=田中信昭
Warning to the rich (Thomas Jennefelt)
「風の馬」より 第1ヴォカリーズ、第3ヴォカリーズ(武満 徹)
「合唱のためのコンポジション第1番」より IV (間宮芳生)
さくら(武満 徹)
クリマ・トーガニ〜田中信昭版〜(高橋悠治)
東洋民謡集2より「戦いの歌」(池辺晋一郎)第2部 指揮=アンドレ・トーマス Andre Thomas
Sit Down Servant (arr. Linda Twine)
Keep Your Lamps (arr. A. Thomas)
Crucifixion (arr. Adolphus Hailstork)
Goin' up to Glory (arr. A. Thomas)
Sometimes I feel Like a Motherless Child (arr. Pamela Baskin-Watson)
My Souls Been Anchored in the Lord (arr. Moses Hogan)
Evenin' Time (arr. Paul Tucker)
Ave Maria (Franz Biebl)
A Child is Born (arr. Michele Weir)
Soon and Very Soon (arr. John Helgen)
I am his Child (Moses Hogan)
What a Mighty God (arr. A. Thomas)アンコール曲
Ride on King Jesus (Moses Hogan)
夕焼小焼 (三善 晃編曲)