Asia Pacific Youth Choir 参加者の声
Asia Pacific Youth Choir 2023
開催日:2023年7月16日(日)〜23日(日)
開催地:マレーシア・ペナン島
指 揮:Chi Hoe Mak(マレーシア)、Tracy Wong(マレーシア/カナダ)
コンサート:21日 Majestic Theatre Penang、22日 Cheong Fatt Tze - The Blue Mansion
Bersatu Senaga
(Together With One Voise) 加藤美月
2021年7月10日。この日、APYC
Virtual Choir Projectのため、第8回APYCのメンバーは初めて顔を合わせた。(当時はその年以外のメンバーもいたが)私たちのAPYCセッションは2年前、”Bersatu
Senada(Together With One Voice)”という曲で始まった。この曲は今回の指揮者の一人Tracy
Wongの作品で、今APYCではアンコールとしてプログラムに組み込まれた。
2020年にメンバーとして選抜されて以来、パンデミックの影響を受け実に3回の延期の末、ようやく、ようやく(!)、2023年にマレーシアのペナン島に集ったメンバーたちは、初日から”Finally!!!”と叫んだり踊ったり歌ったり・・・。とにかく喋り倒すメンバーたちに必死にくらいつこうと前のめりに会話に参加するのは、普段あまり人と会話しない私にとって非常に体力のいる活動で、環境の違いと合わせて体調を崩す日もあったが、全体として振り返れば、全力疾走で充実していたな、と思う。
私はアジアの音が好きである。単純な合唱音楽だけでなく、生活の音、言語、etc.
アジアの様々な文化から派生する音が好きで、それを根にしたアジア人合唱団の豊かな音は、日本の中にいるだけでは経験することができないと思う。そして、APYCでは異なる環太平洋地域のバックグラウンドを持つ愉快な仲間たちが集い、全員バラバラなのになぜか1つになってしまうという超常現象が起こる。「Uniteって、ここからできた単語なんかな」と思ってしまうくらいに”Unite”である。
リハーサル1日目、冒頭の”Bersatu
Senada”を歌った時、全員にまさに”Unite”が起こった。「私たち、これ、歌ったね」と顔を見合わせながら、2020年からの長い時を思い出して涙が出た。”Lagu
kan nada, kini ku tahu (Singing the same song, and now I know)
I’m not alone” 歌った後、指揮者Tracyと抱き合って、「ありがとう」と言い合った。
私はユース時代をパンデミックに溶かされた。そして同じ経験をした人は多いと思う。今だからこそ、「やれるときに挑戦してたほうが良いよ」という言葉は重みがあると思う。次、「いつできなくなるか」本当に分からない。もし迷ってるユースの子がいるなら、できるうちにやっておけ!APYCでも、JCAユースでも、なんでも。それはもう、今しかできないから。
「当たり前」が揺らぎつづけた8日間 瀬戸翔吾
アジア各地から集まった、価値観が大きく異なるメンバーによる1週間のセッション。そこで得た1番の学びは、「自分にとっての当たり前が揺らいだ」ことでした。
初めて声を合わせた時、日本では考えられないくらい発声・声質が多様で、思わず「なんてバラバラなんだ」と否定的にその状況を捉えてしまいました。しかしリハーサルを重ねるうちに、個々の主張がひとつの熱量として曲にあらわれ、発声・声質が多様でありながらも充実した演奏になりました。
「雑音のない/揃っている声が綺麗」
「声を周りに合わせたほうがいい」
...
これらは本当に正しいのだろうか?APYCの経験によって、無意識に思い込んでしまっていたことに改めて向き合う機会を得ることができました。そして、「当たり前」を見直して音楽を作ることが、自由な発想や新しい表現を生み出すきっかけになるのではないかと思います。
日本に戻り、改めて「自分の声で表現したいものは何か?」「いい声って何か?」「そもそもいい声って定義できるのか?」など、当たり前だと思い込んでいたことに向き合い、自分の価値観を再構成していくことが楽しみです。
遠くにいても心は近くに 横山瑞希
まだ、新型コロナウイルスがこんなにも長引き世界がガラリと様子を変えるなんて思っていなかった2020年のはじめ、私はAPYCのオーディションを受けました。幸運にもソプラノのメンバーとして選出いただきましたが、その後状況は悪化の一途を辿り、残念ながら三度の開催延期のご連絡を頂戴することとなりました。今年の始めに今回の開催のご連絡を頂いたとき、オーディションを受けた頃とは環境も心境も変化していた私には、「参加してもいいのだろうか…?」という後ろめたさもありましたが、やはり自分の気持ちを尊重し参加させていただくことを決意しました。
緊張しながら皆と顔を合わせた初日、以前よりずっと友達だったかのように接してくれた皆のことが、出会った瞬間から大好きになりました。曲数も多く、慣れない言語に必死さもありましたが、初日の練習で私が一番感じたことは「そうだった、私はこういう大好きな人たちと時間を共有するためにずっと歌ってきたんだった」ということでした。
今回のAPYCではメンバー内での文化交流やコンサートに向けての練習だけでなく、5〜7人ほどのグループに分かれてそれぞれ小学校や中学校を訪問して60分間の指導をするという機会もいただきました。望んで叶うことではない貴重な経験にワクワクしながらも、不安な気持ちもありましたが、同じグループの皆がとても協力的で楽しく終えることができました。
もう一つ、私にとって「挑戦」だったのは朝のウォームアップでした。同部屋の2人がペアで毎朝交代でウォームアップの担当をすることを初日に告げられ、私は不誠実にも(どうか当たらないでくれ!)と思ってしまったのですが、ものの見事に当たってしまい、私はルームメイトに「どうしよう…」とこぼしていました。優しい彼女は嫌な顔ひとつ見せず笑顔で「大丈夫!」と不安な私を勇気づけてくれました。明け方「大丈夫だよ〜」と彼女が英語で寝言を呟いていて本当に申し訳なく思いました。散々悩んだ結果、幼い頃から合宿の朝やコンクールの直前リハーサルでやっていた「ラジオ体操」を思いつき、私の口伴奏で皆で一緒に体操したのですが、とても気に入ってもらえました。こんなにもラジオ体操に感謝したのは初めてです。
今回私達は二度もコンサートの機会をいただきましたが、特に最終日の演奏はとても印象深く、今思い出しても涙が出ます。最後の曲を歌いながら涙がこぼれてしまい、それでもなんとか皆で必死に堪えながら歌いきった後、皆ぐちゃぐちゃの顔でお辞儀をしました。歌い手としては泣かずに表現ができるのが一番なのですが、私達がどれだけこの場で歌えることに喜びと感謝を持ち、この瞬間を愛おしく思っているかが会場の皆様に伝わったのではないかと思います。
この素敵な日々と仲間のことを思い出せば、この先どんなにつらいことがあっても乗り越えられるような気がします。
遠くにいても私達の心は近くにある、そんな仲間と歌えるAPYCを作り与えてくださった方々、この場で歌うことができる自分を作ってくれた私の先生方や仲間、家族、関わってくださったすべての皆様に心より感謝申し上げます。