アジア・パシフィック・ユース・クワイアに参加した6人の若者たち

Better World ~ 音楽で世界をより素晴らしいものに    芳賀弘善(福島県 Tenor)

APYC"I dream that one day our voices will somehow fill the earth with joy forever…"
 中国から参加のJiang Panの温かい歌声が静まり返ったカテドラルに響き渡る。その豊かなアルトは私の心を満たしていく。そして4日前に出会ったそのときから今までの事が走馬灯のように駆け巡ると同時に、今APYC2011のアンコールが始まったのだということに改めて気づき、胸が熱くなる。涙腺が緩む。
 2月21日、初めてメンバーが同じ空間に集まった。夕食をとりながら、それぞれの勉強や仕事について、所属している合唱団について、生活についてなど時間を忘れて話し込んだ。音楽で結ばれた私たちに話題がなくなることはなかった。とはいえ他の国のメンバーの英語がとても流暢で、自分はついていくのが精一杯(というか取り残されることもあったと思う)だった。その中で私がどう表現していいか分からずに詰まってしまうことがあった。しかし、彼らは私が言おうとすることを真剣に受け取ろうとし、私の言葉が出てくるまで待ってくれた。APYCで最初に感動したことは音楽に関することではなく、自分がこのメンバーに受け入れられていると感じたことである。これがあったからこそ私はその後物怖じすることなく思い切って英語を(たとえそれが間違った英語であっても)話すようになった。するとメンバーも「Hiro~!!」とフレンドリーに声をかけてきてくれ、いろいろな話ができた。
 22日朝、いよいよ練習が始まる日。期待と不安の中、朝食会場に行くと他の国のメンバーが「おはよう」と日本語で話しかけてきた。嬉しくなったと同時にメンバーの多くが使っている中国語(広東語)の挨拶を私はまったく知らず少し悔しく思った。
 そして、練習会場に移動しての発声練習で2度目の感動を覚えた。声の質は違えど、誰の声も洗練された美しい声だった。これらの声がブレンドされ、たくさんの化学反応が起こると思うととても楽しみになった。
 23日朝、私は広東語で朝の挨拶を言ってみた(前日に台湾のメンバーに教えてもらった)。通じるか不安だったが、通じたようで私も嬉しかったし相手も嬉しそうにしてくれた。2日目の練習はいよいよ1曲ずつを丁寧に深めていった。軽快な話術で飽きることのないJojoのリハーサルと、魂の込もった熱い指揮でリードしてくださった長谷川先生のリハーサル。2人の指揮者のおかげで音楽が磨かれていくのを実感できた。また、休憩時間や食事中はいつもどこかから笑い声と歌声が聞こえていた。メンバーとの仲もまるでずっと前から友達だったかと錯覚するくらい親しくなっていった。
 24日、最後の練習。正直、3日間というリハーサル期間はあまりに短く十分とはいえないと思った。ようやくメンバーと親しくなってきたところだったし、音楽においても課題がまだまだ残っていた。しかしリハーサルで2人の指揮者が本当に音楽を楽しんでいるところを見て私たちが最も大切にすべきはアジア・パシフィック・ユース・クワイア(APYC)のメンバーとの一つ一つの瞬間と、音楽を心から楽しむ気持ちなのだと思った。
 25日、私たちは歴史ある素晴らしい教会、カテドラルで演奏会ができた。1曲目の"Ave Maria"が始まった瞬間には教会にそのハーモニーが広がっていくのを感じて神聖な気持ちになったし、"Da coconut nut"では歌うことを心から楽しめた。そして、アンコール。"Better World"の歌詞にもあるように、本当に私たちは音楽で世界をよりよくしていける気がした。もっとみんなと歌っていたいという思いと、APYC2011が終わってしまう寂しさで一杯だったが、みんなの笑顔に救われた。
 APYCのメンバーは、母国や言語、宗教、音楽経験などそれぞれの背景が異なる。しかし、音楽という言語を通して私たちは一緒にひとつの表現ができるのだということを強く感じた。自然とアイコンタクトを取ったり、他パートやソロを聴いたりと、音楽の中でコミュニケーションを取ることができた。それは時として他のコミュニケーション手段よりも遥かに強い結びつきを実現できると肌で感じた。また、私が最も不安だった英語に関しては、伝えようとする気持ち、思い切ってトライしてみようという気持ちが何より大切なのだと感じた。そして、相手や相手の国の文化のことなど、様々なことに関心を持ち、知ろうとする意欲が自分の視野を広げていくのだということが分かった。
 私はAPYCに参加して本当に貴重な経験をさせていただいた。たくさんの仲間ができた。最後に、この機会を与えてくださった方々、支えてくださった方々に心から感謝を申し上げ、その恩返しとして、微力ではあるがこの経験を自分なりの形で還元していきたいと強く思っている。

いつも音楽が溢れる場所    上田絢香(神奈川県 Soprano)

APYC2011 2008年のWorld Youth Choirに参加してから、Japan Youth Choir、Hiroshima Youth Choirといった「Youth Choir」と呼ばれる様々な合唱団に参加してきました。
 こういった形態のYouth Choirには、ふつうの合唱団とは違った魅力がたくさんあると思います。そして、そこでしか味わうことのできない音楽があるのです。今回のAPYCもまた、そのような魅力に溢れた場所でした。
 この合唱団の特徴は、普段は別の場所で音楽をしている人が集まり、限られた時間の中でリハーサルを行い、コンサートをすることです。今自分が所属している、メンバーはいつも一緒に歌っている合唱団でさえも、3日間の合宿だけで、1回分のコンサートのプログラムを仕上げることはできないと思います。しかし、それができてしまうのですから不思議です。
 開催地はわたしにとってはWYC以来、2回目のマカオでした。指揮者はフィリピンのJonathan Velasco氏と、日本から長谷川冴子先生の2人でした。みんなからJojoと呼ばれるJonathan Velasco氏は元WYCのメンバーです。初めてのAPYCの指揮者の1人が彼であったことは、彼自身がYouth Choirを経験しているという面でも、とてもよかったと思います。それはオールスターイブニングや、本番のステージで行う国紹介などのイベントにも活かされていたと思います。
 わたしがこのような合唱団で楽しみにしていて、興味のあることの1つには、指揮者の先生方のリハーサル、そしていろいろな人が行うバリエーション豊かなウォーミングアップがあります。リハーサルは如何にして短期間で多くの曲を作り上げ、コンサートを成功させるかという部分ですから、本当に大変なことだと思います。
 練習初日のウォーミングアップのあとJojoが「いろんな国のいろいろなウォーミングアップがあると思うから、明日からは誰かが前に出てやってみたら面白いね」というようなことを言いました。そして幸運にも、わたしは次の日の朝、長谷川先生にその機会を与えてもらえたのです。実際、英語での指導はしたことがありませんし、する機会もめったにないと思うので、それはわたしにとって本当にいい経験になりました。英語はあまり出来なかったけれど、みんなの表情でそれがうまくいったことがわかりました。休憩時間のときに「さっきのウォーミングアップ教えて」と話しかけてくれた子もいて、それがすごく嬉しかったです。結局、その他の日はすべてJojoがウォーミングアップをしました。わたしは、ウォーミングアップには2種類あると思っています。1つは、その日に歌うために身体や声帯をあたためること。もう1つは、合唱団の技術向上のためです。彼は短い期間で、如何にAPYCという合唱団の音色をつくっていくかということを、とてもよく考えていたと思います。初めはただ声を出すだけだった発声練習も、彼の指導でみんなが次第に周りの音を聴くようになっていきました。「強い声を出すのではなく、やわらかく」と言ったり、5度の響きの中で音階を歌う練習をしたり・・・そして、それはAPYCのサウンドにつながっていったのです。このような彼のアプローチで、わたしは多くのことを学びました。短期間でもすぐに成長していくYouth Choirの可能性や、多くのメンバーがここで何かを学んで帰ろうと思っている姿勢も感じ取ることができました。そして、やはり耳を使って歌うということはとても大切なことだと思いました。
 さて、今回は「Asia」という枠の中でのYouth Choir。様々なところで、「やっぱりアジア人らしいな」と感じるところがありました。例えばソロのオーディションのとき、WYCでは何人もの人がソロオーディションを受けますが、APYCで受ける人がいるかいないかくらいです。1人出てきて、ようやく「・・・じゃあ、わたしも」といった感じでした。また、ソロの立候補がでなくJojoが指名することさえありました。日本語の歌の発音が本当に上手だったり、中国語の曲もすぐに歌いこなせたりして、さすがアジアだなと思うところも沢山ありました。それは歌だけでなく、いろいろな場面で見られました。中華を食べに行けばお箸の使い方がみんな上手くて、きちんとみんなで分け合おうとしたり、観光で自由行動のときにも集団で行動しようとしたりします。中には日本語も少し話せるメンバーもいて、みんな同じ国の仲の良い友達のようでした。
 WYCも、APYCも、国内のYouth Choirも、そこで出会った仲間たちに国境はありません。みんな歌が大好きで、歌いたくて、いろいろなところからたった1つのコンサートのために集まってきます。その場所は、あたたかくて、いつも音楽が溢れていて、笑顔がたえず、どこか懐かしささえも感じます。そこで出会った友達とは、またきっとどこかで一緒に歌えるような気がします。そこで話す悩みや、自分自身のこと、恋愛の話、将来の夢・・・、もしかしたら、その場所だからこそ素直に言えるのかもしれません。
 APYCがこの先もずっと続き、ますます素敵な魅力溢れる合唱団になることを願っています。

Better World ~ 国境を越える    小笠原聡也(青森県 Bass)

APYC2011 今回、アジア・パシフィック・ユース・クワイアに参加するにあたって、たくさんの期待と不安がありました。私は海外に行くことが初めてで、食べ物や言語など、さまざまな不安がありました。 特に、英語は中学校・高校で6年間学んでいるけれども、実際に英語を使って生活することに慣れていなかったため、コミュニケーションの点での不安は大きいものでした。 ですが、アジア・パシフィックの合唱界の将来を担うような人たちはどんな人たちなのか、どんな音楽ができあがるのかすごく楽しみでした。 また、他の国々の人と交流することも楽しみでした。
 マカオでの1週間はあっという間で、いつの間にか不安なんか忘れていて、とても充実していました。メンバーはみんな歌が上手で、練習では歌声にうっとり聴き入ってしまうことが多々ありました。また、それぞれが自分の音楽を持っていて、とても魅力的な日々を過ごせました。そして、みんなお互いのことにとても興味をもっていて、他の国の歌を教えてもらうとみんなで合唱していました。周りのメンバーがアニメや漫画など日本のことに興味をもっていたことにも驚きました。普段見ている漫画が、海を越えていろいろな国に知れわたっていて、まさかこんなところで話の種になるとは思ってもいませんでした。また、みんな日本語をすぐに覚えて話しかけてくれました。今回のプログラムには4つの日本の曲がありましたが、どの曲に関しても日本語が違和感なく発音されていました。住んでいる地域が近いからなのかもしれませんが、それ以上にメンバーの積極的に取り組む姿勢があったからなのだと思います。周りのメンバーはみんな英語が上手で、私はなかなか話かけることができずにいましたが、みんな積極的に話しかけてくれて、私のためにゆっくり話したり、簡単な単語を使って説明してくれました。メンバーには、将来は合唱指揮者を目指している人や、音楽の先生を目指している人など音楽関係の人もいましたが、医療系の大学に在学中の人や会社で働いているという人もいました。
 約20曲のプログラムに対して、リハーサルが3日間しかありませんでしたが、個々の技術が高く、また音色が整っていて、素晴らしい演奏となりました。コンサートはマカオのカテドラルという教会で行いましたが、私は教会に入ったのが初めてで、残響に驚きました。VictoriaやPalestrina、Mozartを演奏したときに、教会などで演奏されていた当時の作曲の技術の高さを実感しました。
 私たちは英語という言語の他に、音楽というコミュニケーションの手段をもっていたからこそ、お互いを理解しあえたのかもしれません。"Border"(国境)を越えて、文化や環境もまったく違うアジアパシフィックの人たちが、合唱が好きという思いでつながり、ともに練習し演奏をするという経験は、貴重な財産であり、今後の課題を見つける機会となりました。技術の発達により、"Border"を越えていろんな情報が得られる今、私たち日本人はどこか受動的なところがあるのかもしれません。日本人は日本の文化を知ることももちろんですが、もっと周りの国の文化を知るべきだと思います。今回アジア・パシフィック・ユース・クワイアに参加して、自分の中に新たな考えが生まれました。今も世界のどこかで争いや災害が起きています。そんな今の世界に私たちは合唱で、平和を訴えることができ、希望を生み出すことができます。今回の経験をもとに、合唱の良さ、音楽の素晴らしさをたくさんの人に伝えたいと思います。

Asia Pacific Youth Choir という希望    林 史哉(京都府 Tenor)

APYC2011 Asia Pacific Youth Choirのオーディションに補欠合格していた私は、直前に参加が決まりました。慌ただしく降り立ったマカオでの一週間は、メンバーの優しさに支えられて過ごすことができた時間で、本当に幸せでした。
 2月21日の夜に初めて顔を合わせたメンバーが、ちょうど三日後の24日夜に合唱団として演奏会を行うというのは、World Youth Choirの活動などと比較してもはるかに短い、困難なものです。しかし、三日間しかないことを誰もが理解しているというのは、かえって三十数人が一つになる手助けをしたのかもしれません。
 21日の午前2時にシンガポールと韓国からマカオに到着した二人のメンバーがいました。素晴らしいマネジメントにより、彼らは空港で落ち合うことができ、街中の公園で一緒に朝を待って、短いセッションの前に親交を深めたそうです。休憩時間には各国から持参されたお菓子が回り、歓喜の声が上がり続けていました。多くのメンバーが毎日の写真を撮り続け、今でも細部をはっきりと思い出させてくれる記録がたくさん残っています。
 メンバーはそれぞれ、個性的で素敵な歌い手でした。ソリストに立候補するメンバーは多くなかったのが意外で、一歩引いて周りの様子をうかがっている様子が見えました。もちろん音楽的アドバイスは的確で、私は特に英語の発音を修正してもらいながら歌っていました。
 皆がアンサンブルの中での歌い手としても魅力的であるだけでなく、素晴らしい音楽家であることが証明したのが、国ごとに出し物が行われたAll Star Eveningでのパフォーマンスでした。演奏会前日に行われたAll Star Eveningでの各国メンバーのアンサンブルはどこも完璧で(歌っていない日本メンバーを除く)、胸を打たれました。自分たちの国の歌をこれだけ見事に歌えること。ひょっとしたら彼らはそのために音楽をしているといっても過言ではないのかもしれません。
 三日間での演奏会を実現するためのリハーサルはとても興味深いものでした。Jonathan Velascoのリハーサルは、わかりやすく多彩なものであり、話も巧みで、メンバーの興味を惹きつけていました。長谷川冴子先生のリハーサルは優しさに満ち溢れ、メンバーを音楽家として信頼し、叱咤激励するものでした。まったく異なる二人の指揮者のリハーサルは、いずれも初めてのAsia Pacific Youth Choirを成功に導くのに不可欠なものでした。
 今回のプログラムは、なじみのない外国語で歌うときも、単に楽譜をたどるだけになったり、口真似だけになったりすることなく、作品の本質に迫ることのできる貴重な機会となりました。アジアの言語の音は互いに親しみやすいものであることも実感しました。
 漫画をはじめとする日本の文化がよく知られ、日本語の作品も歌ったことがあるメンバーが多い中で、長谷川先生の指導を受けて日本の曲を歌うのも魅力的なことでした。歌い手は、どちらかというとそれぞれにはっきり見える得手不得手を互いに支えあい、補い合いながら、特長を出して演奏していたと思います。
 短かっただけに、どの練習風景を切り取っても忘れられない瞬間ばかりです。よく響くからと、コンクリートがむき出しのエレベーターホールで男声練習をして、輪になって歌ったこと。同じ場所で受けたソロのレッスンで、Philippine Madrigal Singersの元メンバーから、そしてJonathan Velascoから、ほとんど一語ずつ指導されたこと。
 リハーサルは十分ではありませんでした。本番も満足の演奏だったとは言えません。それでもこのメンバーが集まる意味はあって、おそらく、このように一つの演奏会を共有して、ただよく知り合うことだと思うのです。
 アンコールに歌った"Better World"が「I dream…」で始まり、「make you a better world」を夢見ているように。
 Asia Pacific Youth Choirが次回はさらに素晴らしいパフォーマンスを見せてくれること、そしてAsia Pacific Youth Choirが歌う希望が少しでも世の中に広がり続けることを願って。
 このプロジェクトにかかわったすべての方々に感謝をこめて。

エネルギーが満ち溢れ刺激し合うユースクワイア    櫻田江美(東京都 Soprano)

APYC2011 APYC第一回目に参加してたくさんの事を学び、いろんな事を吸収してきました。
 私は音楽には国境などないと前から思っていましたが、今回のセッションでそれを肌で感じる事ができました。私達は今回、日本語や中国語、フィリピン語などたくさんの国の曲を歌いましたが普段使わない言語であっても興味を持って取り組めたと思います。特に日本の曲に関しては、最初は発音や言葉の意味などあまりわかっていませんでしたが、少し教えてあげると、どんどん興味をもってくれて言葉を丁寧に歌ってくれました。本番が近くなるにつれて、一緒に歌っていると、まるで日本人が歌っているかと思う事もあるくらいでした。日本人も同様に他の国の曲のときは周りの仲間に聞いたり教えてもらったりしました。私が発音の練習をしているとすぐ誰かが来て一緒に歌いながら教えたりしてくれてとても嬉しかったです。
 今回のセッションはとても短いものでしたが私達にとってとても濃い内容になったと思います。例えば、リハーサル以外の時間でも自主的にパート練習をしたり曲に対しての意見交換、反省点などそれぞれが思った事を話す事ができ、毎日リハーサルがあるたびによくなったと思います。同じ国同士であればこういう事はよくあると思いますが、出会って二日目や国が異なる事もあるのに私達はなんの隔たりもなくできていました。みんな音楽が大好きで合唱することが大好きなこともあり、一つの合唱団にまとまることができました。私はこういった事を経験していくうちに国が違うということをすっかり忘れていました。音楽だけではないと思いますが、私は世界中の仲間と大好きな音楽、一つのサウンドを作ることにより国境など関係無くなることがとても凄い魔法だと思います。どこにいても誰かが歌っていてみんなで口ずさんだりすることがAPYCでは日常なことで、本番に向けたチームワークだけでなく、本当の仲間になれたことがとても嬉しかったです。
 私は今までにアジアユースやジャパンユースを経験していますが、毎回思う事は同世代の仲間と作る音楽は普段とは少し違い、仲間意識がとても高くエネルギーが満ち溢れているということです。今回もエネルギーがたくさんあり、刺激をうけたり、リードしたりと自分自身を成長させてくれる場でもありました。
 JCA、APYC、WYCなどユースクワイアはいくつかありますが、せっかく世界中にできた仲間なので今後自主的に合唱の国際交流を私達自身がどんどん世界に発信していかなくてはいけないと思います。私にとってユースクワイアは合唱を教えてくれたスタート地点だったので、これからどんどん積極的にひろめていきたいと思います。

"違い"は壁ではない    佐藤優衣(東京都 Alto)

APYC2011 今回私は初めて”ユース・クワイア”のセッションに参加しました。参加が決まってから、毎日、毎日、旅行の準備をしたり、譜読みをしたり、参加する日をとても楽しみにしていました。あまりにも夢中で準備に明け暮れていたせいか、出発当日の朝、とても大きな失態をしてしまいました。その失態というのは、文章にしてしまうとあまりにおぞましいので詳しいところは割愛させていただきます。そして個人的な理由から、予約していたフライトはキャンセルに・・・・私の人生始まって以来の最大のピンチに見舞われました。同じところを何度も行ったり来たりしてみたり、取り乱して何も考えられなくなりました。でもピアノの上にあった楽譜たちを見て「集合日には遅れてしまうけれど、行かなければ絶対後悔する。私は絶対マカオで歌って、楽しんでくるのだ」と強い決意を固め、ひとまず日本の合唱連盟とコンタクトをとり、代わりの飛行機を予約し、次の日に出発することになりました。成田まで移動する間も、飛行機に乗ってる間も、こうしているうちにも、リハーサルは進んでいると考えると気が気ではありませんでした。私ができるただ一つのことは、譜読みを続けることだけでした。飛行機の中で、音叉を片手に、楽譜を見つめて唸っている姿は、端から見たら、どんなに奇妙な光景だったことでしょう。それが、私の音楽への精一杯の償いでした。不安を抱えたままマカオに到着。タクシーから見えるネオンサインが、私を迎えてくれました。ホテルで日本メンバーと合流し、少しホッとして、その夜は就寝。次の日は、朝からドキドキしていました。メンバーたちの雰囲気はまったく知らなかったので、私は果たして受け入れてもらえるのかとても不安でした。しかし、そんな心配は無用でした。何事もなかったかのように受け入れてもらい、すんなりと音楽の中に入ることができました。
 今回、私たちAPYCは、2人の素晴らしい指揮者のもとで音楽を創ることができました。1人はフィリピンの指揮者Jonthan Velasco。彼のプログラムは、日本人にとっては、まだまだ認知されていない、現代のフィリピン作曲家のものが中心でした。もう1人の指揮者は我らが日本の長谷川冴子先生で、Victoria、Palestrinaなど合唱の源とも言える作品から、日本語の作品というプログラムでした。とても素晴らしく、興味深いプログラムでしたが、この短い期間で、しかも初めて集まったメンバーで歌い上げるということは、とても大変なことのように思えました。しかし、2人の素晴らしい指揮者によって、この難しいプログラムもだんだん生きた音楽となっていきました。APYCのセッションの中で私が感じたことは、アジアという限られた中から集まったとはいえ、それぞれの国の“得意な音楽”があるということです。私たち日本人は、どちらかというと、ルネサンスのものは歌えても、フィリピンの現代の作品は苦手でした。他の国にも同じようなことがいえるようでした。でも持っているものを共有して補い合いながら、音楽を形にしていくことができ、学びあい、感じあうことができました。それぞれ違う言語、宗教、文化、APYCに参加する前の私は、それが大きな壁であるかのように思っていました。でも実際は“違い”ということは壁などではなく、たとえるならば、別々の情報を持った人間が集まっているということ、情報を交換し合うことで、大きな成果が得られる可能性があるのだと思いました。今回得たものを糧に、今後もたくさんの音楽に出逢いたいです。
 最後になりますが、今回セッションに遅れるなど、大変ご迷惑をおかけしてしまったことを、心からお詫びいたします。

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